太陽生活MORE

Appleの創立者の一人であるスティーブ・ジョブズ氏について側近が記した『ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ』を読んだ。その中で、ジョブズ氏が好きなエピソードとして、T型フォードでアメリカ自動車産業の礎を築いたヘンリー・フォード氏のこんな言葉が紹介されていた。

「顧客に何がほしいか尋ねたら、もっと速い馬がほしいと答えただろう」

未来を見通すことは難しいけれど、未来について語るときには、現在とは前提が違うという前提に立つ必要がある。自明のようにも聞こえるが、実際には、現在を前提に未来について考えたり、語ったりしてしまうことは多い。

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bookimage太陽光発電の住宅向け普及が加速しだした数年前から、太陽光発電の解説本が目立って増えてきました。私も2年ほど前、太陽光発電の専門情報サイトである「太陽生活ドットコム」を立ち上げるにあたり、「太陽光発電」について解説した本をかたっぱしから買いあさって読んでいた時期があります。

そのなかの1冊に、今回ご紹介する『太陽光発電システムがわかる本』の旧版がありました。

市販されている太陽光発電の解説書には、大きく2つの種類があります。1つは、完全に技術者(太陽電池メーカーの技術者など)を対象とした本で、難解な専門用語のオンパレード、どう見たらいいのかわからないようなグラフ類などがたくさん掲載されているものです。太陽光発電がここまで一般的になる以前は、こうした技術者向けの本が大半だったのだろうなと思いました。

そしてもう1つは、一般消費者をターゲットとした解説本です。こちらは、専門知識のない一般消費者でも理解できるようにと、なるべく難しいことはいわず、細かいことは省略して、イラストなどを多用しながら、太陽光発電の概要やメリットをできるだけ丁寧にわかりやすく説明しています。

それぞれはターゲットとする読者も、目指すところもまったく違うわけですから、どちらがよいとか悪いとかということではないでしょう。けれども私のように、「ある程度は技術的な背景なども理解しながら、太陽光発電のしくみや利点、注意点について、人にも説明できるようになりたい」と考える中級程度の読者に向けた本はあまりないと思いました。そんな中で、専門的すぎず、それでいて具体的なデータとか、手続き書類などもそのまま掲載されていいた『太陽光発電システムがわかる本』は、一番役に立った本でした。

最新情報を盛り込んだ改訂版

旧版の『太陽光発電システムがわかる本』は、工業調査会という出版社から出版されていたのですが、残念ながらこの工業調査会は先ごろ自己破産してしまいました。これは想像ですが、版元は破産したものの、これは価値の高い本だということで、別の出版社から改めて出版することになったのでしょう。今回紹介する新版は、オーム社から出版されています。

せっかく出版社も変わって出版し直すのだから、情報も更新して改訂しようということになったのでしょう。新版『太陽光発電システムがわかる本』は、前版をベースとしながらも、全体にわたって改訂がほどこされています。

第1部は、太陽光発電の概論から始まり、太陽電池の種類や、太陽光発電システムを構成する機器とそれぞれの役割などが説明されています。これは太陽光発電の解説本のパターンなのですが、私のようなレベルで、前述したような目的(技術者ではないが、ある程度技術的背景を理解しながら、人にも説明できるようになりたい)で読む人には、ちょうどよいころあいだと思います。

続く第2部では、実際にソーラー・パネルを家の屋根に施工する際の設計、施工の実際、注意点、手続きの具体的方法などが丁寧に説明されています。特に他の解説書にない情報が、この第2部の施工の実際です。施工の専門家に向けた解説書はありますが、本書の特徴は、そうした施工の実際を、専門家でなくてもわかるように説明していることです。実際の設置工事がどんなものなのかがわかるとともに、家の屋根にはさまざまな種類があるなど、「ソーラー・パネルの設置工事」と簡単にはひとくくりにできないことがよくわかります。急速な普及が進む太陽光発電システムの影で、経験不足の設置工事業者がずさんな工事をしている例が少なくないと聞きます。安い方がよいのはわかりますが、安さばかりを追求して、いいかげんな工事などされると何が起こるのか、この第2部を読めば見当がつくようになるでしょう。

エンドユーザーとして、太陽光発電システムを使うだけ、という人にとって本書は少々難しいかもしれません。しかし太陽光発電システムの販売や施工など、仕事として太陽光発電に携わろうとする人には、最高の入門書になると思います。

太陽光発電システムがわかる本
小西 正暉/鈴木 竜宏/蒲谷 昌生 著
オーム社 発行
ISBN978-4-274-21023-5
定価:2300円(税別)
http://ssl.ohmsha.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=978-4-274-21023-5

東北太平洋沖地震による津波が起こした福島第一原子力発電所災害の影響が世界中を駆け巡っています。

地球温暖化問題を背景に、これまで先進各国は、発電時にCO2を排出しない原子力発電を推進する方向にありました。こうした世界の流れを日本の原発事故が一変させてしまったわけです。

いまや世界のそこここで原発の反対運動が広がり、各国は稼働中の原発の安全対策を見直したり、稼働延長の予定を凍結したりと、核エネルギー利用に対して急速にブレーキがかかっています。

一方で勢いを増しているのが、再生可能エネルギーへの追い風です。「原子力発電は危ない、かといって石炭や石油を燃やせば温暖化が進む。安全・安心で地球にやさしい再生可能エネルギーを使おう」という市民の声が高まるとともに、それを受けて世界の再生可能エネルギー産業は、事業拡大の機会を虎視眈々と狙っているように見えます。

なかでも太陽光発電は、ここ数年の成長もあいまって、代替エネルギーの最有力候補となっています。日本の菅首相も「エネルギー政策を抜本的に見直し、太陽光発電などの導入促進を図るべきだ」と発言したとか。

クリーンな太陽光発電が、危険な原子力発電に取って代われるなら、こんなすばらしいことはないでしょう。はたして太陽光発電は、原子力発電の代わりになるのでしょうか? 仮になるとして、どれくらいのソーラー・パネルを設置すればよいのでしょうか。ほかではあまり見かけないので、ここでざっくりと試算してみました。 (さらに…)

未曾有の大災害となってしまった東北関東大震災でお亡くなりになった方に、謹んでお悔やみ申し上げます。また被災されたすべての方々に、心よりお見舞い申し上げます。

地震や原発事故の直接の影響を受けている東北地方のみなさんのご心配、ご不便に比較すれば小さなことなのだが、東京電力から電力供給を受けている関東近県では、発電所の停止などによる電力供給不足から、計画停電(輪番停電)が実施されている。これは、電力供給が需要に追い付かず、不測の大規模停電を起こさないようにするために、地域をいくつかのブロックに分け、あらかじめ時間を区切って計画的に停電を実施していくというもの。この影響で、当初は鉄道が大幅に運行を制限したため、通勤の足が大混乱したのだが、その後は鉄道会社への供給は優先されたのか、運行制限がある程度緩和されるとともに、制限自体も計画的になったため(電力不足が激しい時間帯だけ運休するなど)、やや落ち着きを取り戻した。

とはいえ計画停電は現在実施されている。これにより、街のあらゆる店舗からカセット式コンロや懐中電灯、携帯ラジオ、乾電池などが姿を消した。電力供給はすぐには回復しないので、当面の間は継続される見込みである。4月いっぱいという話もあるが、エアコン利用によって電力需要が最大化する夏も控えているので、実際のところはいつまで続くかわからない。

東京電力は、電力の受給状況を刻々とにらみながら、実際に停電を実施するかどうかを決定している。このため停電が予定されていた地域でも、実際には停電が回避されることも少なくない。これをもって、東京電力は混乱しているとか、対応が二転三転しているなどと批判する向きもあるが、不便を回避してもらったのだから、ありがたいと思うべきではないか。

ごく一部の例外を除き、電気は貯めておけない。いま使っている電気は、いま発電している電気だ。予想される需要量をにらみながら、発電所での発電をコントロールするのは平時においても簡単なことではないだろう。ましてやこのような緊急時なのだから、多少の混乱は仕方ないとも思う。

次の図は、1日の時間帯別電力需要と、その供給源となる電源(発電方法)をグラフにしたものだ。縦軸が電力需要で、時々刻々と変わる需要量に対し、さまざまな電源を使って電力供給していることがわかる。

1日の時間帯別電源の組み合わせ

1日の時間帯別電源の組み合わせ(経済産業省資料『日本のエネルギー2008』 p.36より引用)

このうち、土台となっている原子力発電の大部分がなくなったわけだから、混乱や停電もやむをえないと思える。

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たまたま書店で見かけて、ずいぶんと以前に買って机の上にずっと放置されていた書籍『エネルギー問題!』(松井賢一 著)を正月休みに読んでみました。太陽生活ドットコムやら、この太陽生活MOREやらで、エネルギー問題について発言したりする手前、勉強になりそうだと買い置きしてあった本です。書店でざっと目次を立ち読みしたときに、エネルギー問題にまつわるひととおりのトピックがカバーされているようだったので、別の本のついでに買ったのでした。

石油問題の本質:石油はなくなるのではなく、使われなくなる

この本冒頭は、こんなセンセーショナルな滑り出しで始まります。正直「ああ、よくあるアジテーション本の1つだったか」とがっかりしました。まあそれでもせっかく買ったんだし、どんなアジテーションなのかと読み進みました。

石油はいつか枯渇する。これはだれもが共通して持っている認識だと思います。石油のような天然資源に限りがあるのは当たり前ですし、一方でそうした資源へのニーズは急激に増えているのですから、いつしか人類は石油を使い果たしてしまうに違いない。そんな未来の世の中で、人々が文明的な生活を営むために必要になるものの1つが太陽光発電などの自然エネルギー活用だ。私のおおざっぱな「エネルギー問題」意識といえば、その程度のものでした。

ところが本書は、石油はなくなるどころか、そのうちあまり使われなくなるというのです。どうせ大した裏付けもなく、自己中心的な論旨が展開されるんだろうと思って読み進むと、意外にも、歴史的な背景やら、客観的な指標なども豊富に盛り込みながら、どうしてそうなのかがきちんと説明されていました。ここで詳しくは説明しませんが、その理由は「石油探査や採掘技術が高度化し、確認埋蔵量は増え続けていること」「石油の需要家が価格統制力を失ったOPECに見切りをつけ、石油離れを起こしつつあること」「石油需要の柱である自動車の電気化が進み、需要が激減すること」などだと説明されています。

エネルギー問題の現場で、この数十年何が起こってきたのか

著者の松井氏は、数十年にわたって、国際エネルギー機関(IEA)や国連(UN)のエネルギー問題のコンサルタントやアドバイザーとして活動されてきた人で、いわばエネルギー問題の舞台裏を見続けてきた人だといってよいでしょう。やはり、現実に起こったことに精通した人の論は迫力があります。

石油問題に続き驚かされたのは、地球温暖化問題の説明です。松井氏は現在の地球温暖化問題に懐疑的な目を向けながら、温暖化問題をめぐり、国連などでどのような駆け引きがあったのか、その中で日本がどれだけ貧乏くじをひかされているかがわかりやすく説明されています。京都議定書が定めた「1990年比での削減目標」が、なぜ「1990年」なのか。恥ずかしながらそれまではあまり深く考えなかったのですが、ヨーロッパ諸国にとってそれが有利だったからだそうです。説明によれば、1990年以降、イギリスは発電用燃料を石炭からガスに切り替え、ドイツは非効率だった旧東ドイツの発電所の効率を大幅に高めたため、この2国分だけで、ヨーロッパ全体の削減目標を達成できてしまうからだというのです。それではまるで、後出しジャンケンではありませんか。

また国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)において、ヨーロッパ諸国は一国一人で会議に参加するため参加者が大勢いるのに、削減目標の設定はEUで1つなので、議論や制度を有利な方向に導きやすいという問題もあるそうです。

表向きの報道だけ見ていると、ヨーロッパ諸国は二酸化炭素削減に非常に積極的なように思えますが、裏側ではこういう駆け引きがあり、結局割を食うのは日本だけ、というような状況があるようです。国連で大風呂敷を広げた鳩山前首相がこのあたりの事情を知っていたのかどうか、大いに気になるところですね。

素人でも読める、国際エネルギー事情の解説書

ついつい力が入ってしまいました。でも本当に、エネルギー問題について、私のような素人でもわかるように、やさしく解説してくれている良書です。この手の解説書というと、研究者が研究者に向けて書いた論文か、わかりやすいが信憑性や裏付けは非常に怪しい解説本かに分かれてしまう中で、本書は歴史的な経緯や客観的な指標を豊富に使いながら、それでいて研究論文ではなく、読み物として楽しめる稀少な本にまとまっています。

エネルギー問題に関心のある方は、ぜひとも一読されることをお勧めします。きっと、いままで持っている「エネルギー問題の常識」を気持ちよくひっくり返してくれるに違いありません。

『エネルギー問題!』(松井賢一 著/NTT出版 発行) ISBN978-4-7571-6046-0 価格:2415円