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前のエントリで説明したとおり、地球環境という大物を相手にする環境問題や地球温暖化問題は自分の手にあまるので、注視はしつつもむやみに語らないことにしました。今日はこの問題について考えさせられた1冊の本をご紹介しようと思います。

Sustainable Energy without The Hot Air

これは、イギリスのDavid JC MacKayさんというケンブリッジ大学の教授が書いた『Sustainable Energy without The Hot Air』という書籍です。直訳すれば、「温暖化を伴わない持続可能エネルギーについて」とでもなるでしょうか。CO2排出やエネルギー問題について記した良書です。この本の面白い第1の点は、350ページを越える立派な書籍で、30米ドルほど(Kindle版もあり)で書店販売されているにもかかわらず、全コンテンツが無料でWebページやPDFで公開されていることです。

Davidさんの説明によれば、「この本はお金のために書いたわけじゃないから、Webの無料電子版がいいなら使ってくれたまえ」とのこと。ということで、誰でも書籍の全文を無料で読めます。

しかし本書を興味深いものにしている第2の点は、エネルギー問題について、徹底的に数字の裏づけを追求しながら説明していることです。

環境問題やエネルギー問題について記した書籍は数多くあります。私が先日行った大型書店の理工学書セクションには、「環境・エネルギー」というコーナーがあり、たくさんの書籍が山積みになっていました。タイトルをざっと見渡して思うのは、まったく正反対の趣旨の本が、さながら宗教戦争のように対立していることです。ある本は「地球温暖化問題は一刻の猶予もない。グズグズしていては手遅れになる」と危機感をあおっている一方で、「地球温暖化など嘘っぱち」とこき下ろす本もあります。どの本も、著者は大学の先生などの専門家ばかり。専門家の意見がどうしてこうも真っ二つに分かれるのか。素人としては何がどうなっているのか途方にくれるばかりです。

Davidさんがこの本を書いた理由の1つも、この混乱した状況に一石を投じたいということだったようです。Davidさんの説明によれば、混乱原因の第一は「形容詞であおる」こと。「地球には『莫大な』自然エネルギーがあり、これらを活かせばエネルギー問題は解決できる」など、特段の根拠なく形容詞だけで主張を繰り広げるものがあります。第2は、数字の裏づけをしているように見せかけて、実は統計上のトリックなどを巧みに使って自身に有利な主張をしているものです。これらに対しDavidさんは、徹底して客観的な数字で説明することを書籍全体に貫いています。その徹底ぶりは痛快なほどです。

具体的には、私たちが生活で必要とするエネルギーの需要量と、その需要に対し、自然エネルギーなどの非化石エネルギー源でまかなえるエネルギー量をバランスシートにみたてて、将来の持続可能なエネルギー生活がどのようなものか、夢物語ではない、現実的なエネルギー供給策はどのようなものなのかを論理的に探っています。

まずは要約版をごらんあれ

そんなに分厚い英語の書籍を読みこなすのは大変だ、と考える人も多いでしょう。実は私もその一人です。そんな人は、まずは要約版を読んでみてください。こちらは書籍の要点を10ページにまとめたものです。あくまで書籍全体のエキスを短くまとめたものなので、簡単に読めるとはいいませんが、このくらいならがんばって読んでみようという気になります。まずはこの要約版を読んで、興味をもった部分について、書籍版でさらに深く読み進むという方法がよいかもしれません。

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