太陽生活MORE

三菱自動車の「i-MiEV(アイミーブ)」や日産自動車の「リーフ」といった電気自動車の一般消費者向けへの販売が開始されました。電気自動車は、安価な夜間電力を利用して充電し、その電気で走ることで燃料費を大幅に低減できるというメリットがあります(ガソリン自動車の10分の1から15分の1という調査結果もあります)。また、発電時に発生するCO2を考慮しても、ガソリンを燃やして走る従来の自動車よりはCO2削減効果が期待できます。将来的には、太陽光発電システムで発電した電気を電気自動車に充電して利用するというアイデアもあるようです。これが実現すれば、運用時点ではいっさいCO2を発生しない自動車利用が可能になります。

一戸建ての住宅なら、車庫を改造して電気自動車の充電器(EV充電器)を設置することができます。しかしマンションとなるとこうはいきません。既存のマンションの駐車場にEV充電器を設置する場合、共用部分の変更にあたるため、区分所有法により、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要になるためです(追記:場合によっては、管理規約の規定により2分の1以上の多数決で導入できる可能性もあります)。

EV充電器と電気自動車のマンション居住者への普及は、にわとりと卵の関係ともいえます。電気自動車が普及しているのであれば、マンションにもEV充電器が必須となります。しかし普及していない状態では、EV充電器の導入とメンテナンスに無駄な費用がかかるだけのものとなってしまうため、マンションの区分所有者の賛成を得るのは難しく、EV充電器の導入は進みません。EV充電器がなければ、電気自動車は使えないので、マンション居住者は購入できません。

機械式駐車場の場合、設備の入れ替え時期(耐用年数は20年から25年)にEV充電器付きに更新するのであれば、まだ区分所有者の理解を得やすいかもしれません。それでも設置コストやメンテナンスコストが上がることが予想されるため、EV充電器の設置によほどのメリットがないと、多数の賛成を得るのは容易ではないでしょう。平置き駐車場では、さらにEV充電器の導入は困難です。駐車場エリアに電源が設置されていないケースが多いことから、EV充電器を取り付けること自体が難しかったり、大規模な工事が必要になったりするからです(機械式駐車場の場合は、パレットと呼ばれる駐車エリアを移動するための電源があるため、機械式駐車場をEV充電器付きへ更新すれば済みます)。

・電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)に対応充電機能を持たせた立体駐車場を開発(三菱重工パーキング)
http://www.mhi.co.jp/news/story/0912154884.html

plug-in リフトパーク

三菱重工パーキングのEV充電器付き立体駐車場「plug-in リフトパーク」(写真提供:三菱重工パーキング)

たとえマンションにEV充電器が導入できたとしても、課金方法など解決しなければならない運用上の問題があります。そこでマンションデベロッパー大手の大京は、日産自動車と協力して既築マンションへのEV充電器の設置に対する問題点などを検証していく、と発表しています。大京では、前述のように区分所有者の合意を得るのが難しいことが予想されるため、既築マンションにEV充電器を設置するためのスキーム(所有者の合意形成)を検証するということです。またEV充電器を居住者に利用してもらうことで、運用上の課題とその解決策を実証するとしています。

・ルノー・日産アライアンスと大京 分譲済みマンションにおける電気自動車充電インフラに関する覚書を締結(大京)
http://www.daikyo.co.jp/dev/files/20100810.pdf

環境にやさしく、燃料費も安く済む電気自動車ですが、マンション居住者が買えるようになるまでは、乗り越えなければならない高いハードルがありそうです。

memo

コメントする

投稿いただいたコメントは、編集部で内容を確認してから公開されます。
投稿のガイドラインについては、コメントの公開ポリシーをご覧ください。

2 件のコメントが寄せられています。:

  1. 大井尚行 より:

    最近EVに興味を持っていてかつマンション居住なので興味深く読ませていただきました。マンションに関する問題点の指摘も少ないので大変ありがたいと思います。

    ただ,一部ハードルを高く見せすぎているような気もしましたのでコメントします。マンション居住者があきらめモードになると困るので・・・

    「既存のマンションの駐車場にEV充電器を設置する場合、共用部分の変更にあたるため、区分所有法により、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要になる」とありますが,議決の割合を定めているのは「区分所有法」ではなく個々のマンションの「管理規約」ではないでしょうか。また規約の解釈も個々の管理組合の運用によるところもあるかと思います。

    私のところは建設時(約15年前)の標準管理規約に近いと思いますが,共用部に関して議決に4分の3以上を要する事項は以下のようになっています。
    ・敷地及び共用部分等の変更(改良を目的とし,かつ,著しく多額の費用を要しないものを除く。)又は処分

    まず「変更」と書かれているので設備の新設が変更に含まれるかどうかの議論ができるでしょう。防犯カメラシステムを設置した際には誰も「変更」とは考えませんでした。仮に変更だとしても,充電設備は「改良目的」と判断してもおかしくなさそうですし,費用はマンション規模によりそうです。予備費や繰り越し金と桁が違わなければ説明できそうです。今のところ,数年後にうちのマンションで提案するとすれば1/2でいけるのではないかと考えています。

    売電のからむ太陽光発電と比べれば,ずっとハードルは低いものと思います。

  2. 小林 章彦 より:

    大井様 ご意見ありがとうございます。ご指摘のとおり、著しい変更や費用負担がない場合、管理規約におきまして2分の1までの決議で済むようです。記事に注釈を入れさせていただきます。

    EV充電器の導入は、まだまだ事例が少なく、変更なのか、改良目的なのか判断が難しいかもしれません。こうした点についても、大京などが検証し、事例として公表することで、はっきりとしてくると思います。