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011年 5月 の記事

bookimage太陽光発電の住宅向け普及が加速しだした数年前から、太陽光発電の解説本が目立って増えてきました。私も2年ほど前、太陽光発電の専門情報サイトである「太陽生活ドットコム」を立ち上げるにあたり、「太陽光発電」について解説した本をかたっぱしから買いあさって読んでいた時期があります。

そのなかの1冊に、今回ご紹介する『太陽光発電システムがわかる本』の旧版がありました。

市販されている太陽光発電の解説書には、大きく2つの種類があります。1つは、完全に技術者(太陽電池メーカーの技術者など)を対象とした本で、難解な専門用語のオンパレード、どう見たらいいのかわからないようなグラフ類などがたくさん掲載されているものです。太陽光発電がここまで一般的になる以前は、こうした技術者向けの本が大半だったのだろうなと思いました。

そしてもう1つは、一般消費者をターゲットとした解説本です。こちらは、専門知識のない一般消費者でも理解できるようにと、なるべく難しいことはいわず、細かいことは省略して、イラストなどを多用しながら、太陽光発電の概要やメリットをできるだけ丁寧にわかりやすく説明しています。

それぞれはターゲットとする読者も、目指すところもまったく違うわけですから、どちらがよいとか悪いとかということではないでしょう。けれども私のように、「ある程度は技術的な背景なども理解しながら、太陽光発電のしくみや利点、注意点について、人にも説明できるようになりたい」と考える中級程度の読者に向けた本はあまりないと思いました。そんな中で、専門的すぎず、それでいて具体的なデータとか、手続き書類などもそのまま掲載されていいた『太陽光発電システムがわかる本』は、一番役に立った本でした。

最新情報を盛り込んだ改訂版

旧版の『太陽光発電システムがわかる本』は、工業調査会という出版社から出版されていたのですが、残念ながらこの工業調査会は先ごろ自己破産してしまいました。これは想像ですが、版元は破産したものの、これは価値の高い本だということで、別の出版社から改めて出版することになったのでしょう。今回紹介する新版は、オーム社から出版されています。

せっかく出版社も変わって出版し直すのだから、情報も更新して改訂しようということになったのでしょう。新版『太陽光発電システムがわかる本』は、前版をベースとしながらも、全体にわたって改訂がほどこされています。

第1部は、太陽光発電の概論から始まり、太陽電池の種類や、太陽光発電システムを構成する機器とそれぞれの役割などが説明されています。これは太陽光発電の解説本のパターンなのですが、私のようなレベルで、前述したような目的(技術者ではないが、ある程度技術的背景を理解しながら、人にも説明できるようになりたい)で読む人には、ちょうどよいころあいだと思います。

続く第2部では、実際にソーラー・パネルを家の屋根に施工する際の設計、施工の実際、注意点、手続きの具体的方法などが丁寧に説明されています。特に他の解説書にない情報が、この第2部の施工の実際です。施工の専門家に向けた解説書はありますが、本書の特徴は、そうした施工の実際を、専門家でなくてもわかるように説明していることです。実際の設置工事がどんなものなのかがわかるとともに、家の屋根にはさまざまな種類があるなど、「ソーラー・パネルの設置工事」と簡単にはひとくくりにできないことがよくわかります。急速な普及が進む太陽光発電システムの影で、経験不足の設置工事業者がずさんな工事をしている例が少なくないと聞きます。安い方がよいのはわかりますが、安さばかりを追求して、いいかげんな工事などされると何が起こるのか、この第2部を読めば見当がつくようになるでしょう。

エンドユーザーとして、太陽光発電システムを使うだけ、という人にとって本書は少々難しいかもしれません。しかし太陽光発電システムの販売や施工など、仕事として太陽光発電に携わろうとする人には、最高の入門書になると思います。

太陽光発電システムがわかる本
小西 正暉/鈴木 竜宏/蒲谷 昌生 著
オーム社 発行
ISBN978-4-274-21023-5
定価:2300円(税別)
https://www.ohmsha.co.jp/book/9784274210235/