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Appleの創立者の一人であるスティーブ・ジョブズ氏について側近が記した『ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ』を読んだ。その中で、ジョブズ氏が好きなエピソードとして、T型フォードでアメリカ自動車産業の礎を築いたヘンリー・フォード氏のこんな言葉が紹介されていた。

「顧客に何がほしいか尋ねたら、もっと速い馬がほしいと答えただろう」

未来を見通すことは難しいけれど、未来について語るときには、現在とは前提が違うという前提に立つ必要がある。自明のようにも聞こえるが、実際には、現在を前提に未来について考えたり、語ったりしてしまうことは多い。

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東北太平洋沖地震による津波が起こした福島第一原子力発電所災害の影響が世界中を駆け巡っています。

地球温暖化問題を背景に、これまで先進各国は、発電時にCO2を排出しない原子力発電を推進する方向にありました。こうした世界の流れを日本の原発事故が一変させてしまったわけです。

いまや世界のそこここで原発の反対運動が広がり、各国は稼働中の原発の安全対策を見直したり、稼働延長の予定を凍結したりと、核エネルギー利用に対して急速にブレーキがかかっています。

一方で勢いを増しているのが、再生可能エネルギーへの追い風です。「原子力発電は危ない、かといって石炭や石油を燃やせば温暖化が進む。安全・安心で地球にやさしい再生可能エネルギーを使おう」という市民の声が高まるとともに、それを受けて世界の再生可能エネルギー産業は、事業拡大の機会を虎視眈々と狙っているように見えます。

なかでも太陽光発電は、ここ数年の成長もあいまって、代替エネルギーの最有力候補となっています。日本の菅首相も「エネルギー政策を抜本的に見直し、太陽光発電などの導入促進を図るべきだ」と発言したとか。

クリーンな太陽光発電が、危険な原子力発電に取って代われるなら、こんなすばらしいことはないでしょう。はたして太陽光発電は、原子力発電の代わりになるのでしょうか? 仮になるとして、どれくらいのソーラー・パネルを設置すればよいのでしょうか。ほかではあまり見かけないので、ここでざっくりと試算してみました。 (さらに…)

未曾有の大災害となってしまった東北関東大震災でお亡くなりになった方に、謹んでお悔やみ申し上げます。また被災されたすべての方々に、心よりお見舞い申し上げます。

地震や原発事故の直接の影響を受けている東北地方のみなさんのご心配、ご不便に比較すれば小さなことなのだが、東京電力から電力供給を受けている関東近県では、発電所の停止などによる電力供給不足から、計画停電(輪番停電)が実施されている。これは、電力供給が需要に追い付かず、不測の大規模停電を起こさないようにするために、地域をいくつかのブロックに分け、あらかじめ時間を区切って計画的に停電を実施していくというもの。この影響で、当初は鉄道が大幅に運行を制限したため、通勤の足が大混乱したのだが、その後は鉄道会社への供給は優先されたのか、運行制限がある程度緩和されるとともに、制限自体も計画的になったため(電力不足が激しい時間帯だけ運休するなど)、やや落ち着きを取り戻した。

とはいえ計画停電は現在実施されている。これにより、街のあらゆる店舗からカセット式コンロや懐中電灯、携帯ラジオ、乾電池などが姿を消した。電力供給はすぐには回復しないので、当面の間は継続される見込みである。4月いっぱいという話もあるが、エアコン利用によって電力需要が最大化する夏も控えているので、実際のところはいつまで続くかわからない。

東京電力は、電力の受給状況を刻々とにらみながら、実際に停電を実施するかどうかを決定している。このため停電が予定されていた地域でも、実際には停電が回避されることも少なくない。これをもって、東京電力は混乱しているとか、対応が二転三転しているなどと批判する向きもあるが、不便を回避してもらったのだから、ありがたいと思うべきではないか。

ごく一部の例外を除き、電気は貯めておけない。いま使っている電気は、いま発電している電気だ。予想される需要量をにらみながら、発電所での発電をコントロールするのは平時においても簡単なことではないだろう。ましてやこのような緊急時なのだから、多少の混乱は仕方ないとも思う。

次の図は、1日の時間帯別電力需要と、その供給源となる電源(発電方法)をグラフにしたものだ。縦軸が電力需要で、時々刻々と変わる需要量に対し、さまざまな電源を使って電力供給していることがわかる。

1日の時間帯別電源の組み合わせ

1日の時間帯別電源の組み合わせ(経済産業省資料『日本のエネルギー2008』 p.36より引用)

このうち、土台となっている原子力発電の大部分がなくなったわけだから、混乱や停電もやむをえないと思える。

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前のエントリで説明したとおり、地球環境という大物を相手にする環境問題や地球温暖化問題は自分の手にあまるので、注視はしつつもむやみに語らないことにしました。今日はこの問題について考えさせられた1冊の本をご紹介しようと思います。

Sustainable Energy without The Hot Air

これは、イギリスのDavid JC MacKayさんというケンブリッジ大学の教授が書いた『Sustainable Energy without The Hot Air』という書籍です。直訳すれば、「温暖化を伴わない持続可能エネルギーについて」とでもなるでしょうか。CO2排出やエネルギー問題について記した良書です。この本の面白い第1の点は、350ページを越える立派な書籍で、30米ドルほど(Kindle版もあり)で書店販売されているにもかかわらず、全コンテンツが無料でWebページやPDFで公開されていることです。

Davidさんの説明によれば、「この本はお金のために書いたわけじゃないから、Webの無料電子版がいいなら使ってくれたまえ」とのこと。ということで、誰でも書籍の全文を無料で読めます。

しかし本書を興味深いものにしている第2の点は、エネルギー問題について、徹底的に数字の裏づけを追求しながら説明していることです。

環境問題やエネルギー問題について記した書籍は数多くあります。私が先日行った大型書店の理工学書セクションには、「環境・エネルギー」というコーナーがあり、たくさんの書籍が山積みになっていました。タイトルをざっと見渡して思うのは、まったく正反対の趣旨の本が、さながら宗教戦争のように対立していることです。ある本は「地球温暖化問題は一刻の猶予もない。グズグズしていては手遅れになる」と危機感をあおっている一方で、「地球温暖化など嘘っぱち」とこき下ろす本もあります。どの本も、著者は大学の先生などの専門家ばかり。専門家の意見がどうしてこうも真っ二つに分かれるのか。素人としては何がどうなっているのか途方にくれるばかりです。

Davidさんがこの本を書いた理由の1つも、この混乱した状況に一石を投じたいということだったようです。Davidさんの説明によれば、混乱原因の第一は「形容詞であおる」こと。「地球には『莫大な』自然エネルギーがあり、これらを活かせばエネルギー問題は解決できる」など、特段の根拠なく形容詞だけで主張を繰り広げるものがあります。第2は、数字の裏づけをしているように見せかけて、実は統計上のトリックなどを巧みに使って自身に有利な主張をしているものです。これらに対しDavidさんは、徹底して客観的な数字で説明することを書籍全体に貫いています。その徹底ぶりは痛快なほどです。

具体的には、私たちが生活で必要とするエネルギーの需要量と、その需要に対し、自然エネルギーなどの非化石エネルギー源でまかなえるエネルギー量をバランスシートにみたてて、将来の持続可能なエネルギー生活がどのようなものか、夢物語ではない、現実的なエネルギー供給策はどのようなものなのかを論理的に探っています。

まずは要約版をごらんあれ

そんなに分厚い英語の書籍を読みこなすのは大変だ、と考える人も多いでしょう。実は私もその一人です。そんな人は、まずは要約版を読んでみてください。こちらは書籍の要点を10ページにまとめたものです。あくまで書籍全体のエキスを短くまとめたものなので、簡単に読めるとはいいませんが、このくらいならがんばって読んでみようという気になります。まずはこの要約版を読んで、興味をもった部分について、書籍版でさらに深く読み進むという方法がよいかもしれません。

約1年前に太陽光発電の情報サイト「太陽生活ドットコム」を立ち上げるとき、新サイトについてプレゼンするたびに、「CO2に起因する地球温暖化を回避するために太陽光発電は不可欠だ」と偉そうにふれまわっていました。けれどその後考えるところがあり、CO2排出問題や地球温暖化問題について口にするのをやめました。今回はこのお話をしたいと思います。

結局のところ、よくわからない

元米副大統領であるアル・ゴア氏の『不都合な真実』をはじめ、人間の生活に付随して排出されるCO2が地球温暖化を進めるという考えが、半ば常識として世界を覆っているのはみなさんご承知のとおりです。これに対して、「そんなものはウソッパチだ」とする書籍などが売られているのは以前から知っていました。最初のうちは私も地球温暖化問題信奉派だったので、こういう懐疑論は「たちの悪い印税狙いのパフォーマンスだろう」と思って取り合わないようにしていました。しかし個人的に非常に尊敬し、私のビジネスの先生でもある都村長生(つむら たけお)さんが、地球温暖化問題の完全な否定派だと知り、その氏の論文を読んだ結果、まったく自信がなくなってしまったのです(都村長生氏のページ。無料会員になれば、1日1つだけ記事を読めます。私が影響を受けた記事は、「なんしょんな Q&A」の175番です)。

都村氏の主張を簡単にまとめれば、「地球温暖化論のよりどころとなっているIPCC(気象変動に関する政府間パネル)の報告はまったく信用できない」「IPCC報告書のシミュレーション・モデルには根本的な欠陥がある」「百歩譲って温暖化が進むとして、温暖化はいけないことではない。温暖化が進めば、現在人類が直面している最大の問題である『食料問題』と『エネルギー問題』を解決できる」というものです。これはこれでかなり極端な意見であって、都村氏の意見にすべて賛同したわけではないのですが、地球温暖化論を無条件に信じていた気持ちは大きく揺らぎました。結局のところ、私は気象学の専門家ではありませんから、どちらの主張が正しいのか自分では判断できないということにいまさらながら気づかされたのです。わかりもしないくせに、偉そうに吹聴してまわった自分が恥ずかしくなりました。都村氏のほかにも、温暖化問題懐疑派の意見は多数あります。これらについては、ウィキペディアの地球温暖化に対する懐疑論を参照するとよいでしょう。

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