太陽生活MORE

未曾有の大災害となってしまった東北関東大震災でお亡くなりになった方に、謹んでお悔やみ申し上げます。また被災されたすべての方々に、心よりお見舞い申し上げます。

地震や原発事故の直接の影響を受けている東北地方のみなさんのご心配、ご不便に比較すれば小さなことなのだが、東京電力から電力供給を受けている関東近県では、発電所の停止などによる電力供給不足から、計画停電(輪番停電)が実施されている。これは、電力供給が需要に追い付かず、不測の大規模停電を起こさないようにするために、地域をいくつかのブロックに分け、あらかじめ時間を区切って計画的に停電を実施していくというもの。この影響で、当初は鉄道が大幅に運行を制限したため、通勤の足が大混乱したのだが、その後は鉄道会社への供給は優先されたのか、運行制限がある程度緩和されるとともに、制限自体も計画的になったため(電力不足が激しい時間帯だけ運休するなど)、やや落ち着きを取り戻した。

とはいえ計画停電は現在実施されている。これにより、街のあらゆる店舗からカセット式コンロや懐中電灯、携帯ラジオ、乾電池などが姿を消した。電力供給はすぐには回復しないので、当面の間は継続される見込みである。4月いっぱいという話もあるが、エアコン利用によって電力需要が最大化する夏も控えているので、実際のところはいつまで続くかわからない。

東京電力は、電力の受給状況を刻々とにらみながら、実際に停電を実施するかどうかを決定している。このため停電が予定されていた地域でも、実際には停電が回避されることも少なくない。これをもって、東京電力は混乱しているとか、対応が二転三転しているなどと批判する向きもあるが、不便を回避してもらったのだから、ありがたいと思うべきではないか。

ごく一部の例外を除き、電気は貯めておけない。いま使っている電気は、いま発電している電気だ。予想される需要量をにらみながら、発電所での発電をコントロールするのは平時においても簡単なことではないだろう。ましてやこのような緊急時なのだから、多少の混乱は仕方ないとも思う。

次の図は、1日の時間帯別電力需要と、その供給源となる電源(発電方法)をグラフにしたものだ。縦軸が電力需要で、時々刻々と変わる需要量に対し、さまざまな電源を使って電力供給していることがわかる。

1日の時間帯別電源の組み合わせ

1日の時間帯別電源の組み合わせ(経済産業省資料『日本のエネルギー2008』 p.36より引用)

このうち、土台となっている原子力発電の大部分がなくなったわけだから、混乱や停電もやむをえないと思える。

停電の影響をできるだけ回避するには

計画停電の影響をできるだけ小さくするにはどうすればよいか。供給側の能力はほぼ決まっているわけだから、計画停電を回避できるかどうかは、需要が供給能力を上回ってしまう可能性をどれだけ減らせるかにかかってくる。工場など大口需要家の影響が大きいのはもちろんだが、実は電力需要の3割程度は家庭である。つまり、消費者が節電したり、ピーク時を外して比較的供給能力に余裕がある時間帯に消費をシフトすることで、停電を回避できるチャンスを増やせるわけだ。一人ひとりの節約やシフトは全体から見れば微々たるものだが、総量では全体の3割なのだから、みんなで協力すればけっこうな力になる。そこでここでは、計画停電を回避するために、電力需要が供給を上回らないように、少しでも貢献するためにどうすればいいのかを考えてみたい。

もう一度、上の図を参照願いたい。図を見るとわかるとおり、電力需要は、午前6時くらいから急激に増加し、午後2時~4時、午後7時~8時くらいにピークを迎え、午後10時を過ぎると減少に向かう。簡単にいえば、朝起きて、昼に働いて、夕食をとって寝るという人間の生活に合わせて電気が使われているわけだ。つまり「ピーク時を外す」というのを具体的にいえば、昼間(午前6時~午後10時)の電力消費を、深夜(午後10時~翌午前6時)にまわせばよい。計画停電中の鉄道運行が、一部で夕方から午後10時ごろまでの制限を強めたり(運休するなど)していることもこれを裏付けている。

1日を通してできる節電

まずは時間帯に限らず、1日を通して家庭でできる節電について。これについては、財団法人 省エネルギーセンターが公開している『家庭の省エネ大事典』が詳しい(ダウンロードはこちら)。

影響の大きそうなところでは、まずエアコンの利用を最低限にすること。温度設定で設定温度を冬は低く、夏は高くする。可能であればこまめに消したりつけたりする。それから現在のような冬場には、電気カーペットやコタツをつけっぱなしにしやすいが、こちらも使っている部分だけオンにしたり(電気カーペットの場合)、設定温度を弱くしたり(こたつの場合)、使っていなければ消すようにする。また白熱電球を使っているなら、なるべく蛍光灯タイプの電球やLED電球に変える。特につけっぱなしにする門灯など、電球がよく切れる場所は使用頻度が高いので優先的に交換すべきだ。

電力消費をシフトする

次は電力消費のシフト。こちらも簡単で、要は夜(午後10時以降)にまわせることは、朝や昼でなく夜にやるようにすればよい。洗濯機は思い切って朝でなく夜のうちに回しておくとか、掃除機も隣近所の迷惑にならないなら10時以降にする、IHクッキングヒーターを使っているなら、翌朝の朝食やお弁当の準備のうち、可能な下ごしらえは前の晩のうちにやってしまう、などである。

そして節約と消費シフトだけでなく、電力供給者としても貢献できる太陽光発電

これまでは電力消費の節約と、消費時間のシフトによって電力受給の逼迫を少しでも回避する方法を述べてきた。太陽光発電ユーザーにしたところで、これらは同じことである。しかし太陽光発電ユーザーは、節約だけでなく、自分の家で発電した電気を系統に逆潮流して、電力供給に一役買える。うまいことに太陽光発電は、電力需要が増える昼間の時間帯に発電できるときている(というか、人間が日の出・日の入りに合わせて生活しているのだが)。そういうことなので、太陽光発電ユーザーは、ぜひとも昼間の節電にいっそう励んで余剰電力をできるだけ出して、それを逆潮流させて、胸を張って社会貢献していただきたい。

これまでの太陽光発電というと、「元をとれるのか?」ということばかりが注目されていたが、これからはきっと「社会に貢献できるなら、元などどれなくても太陽光発電したい」という人が増えるだろうと思う。いや、そう願いたい。

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5 件のコメントが寄せられています。:

  1. RIEKO says:

    今後の原子力発電のありかたについては、どう思われますか?なた、何かご存じのことはありますか? わたしは「推進していくしかない派」だったのですが、このたびの原発事故で、他の発電方法でどこまでできるか、いちから検討し直し、積極的にほかの発電方法を取り入れる必要があるんじゃないかと思い始めました。

  2. RIEKOさん、コメントありがとうございます。
    今回の事故で、個人的には、原子力利用の恐ろしさを強く感じています。ただだからといって、原子力発電を世界からなくすべきか、核エネルギー開発を放棄すべきかと聞かれると、肯定も否定もできません。理由は、人類が直面しているエネルギー問題について語れるほど、知識も経験も持ち合わせていないからです。
    正直なところ、今回の福島原発の事故により、日本をはじめ先進各国では、原発慎重論が台頭すると思います。多少電気代は高くなってもいいから、既存の化石エネルギー利用や、自然エネルギー利用を増やす。一方では贅沢な暮らしを少し改めて、消費エネルギーの低減にみんなで努力しよう、という風潮が高まるでしょう。
    豊かな人たちの理屈はこれでもいいかもしれません。しかし、核エネルギー利用を根絶しようという議論なのであれば、電気もなく貧しく暮らしている人たちが世界には数十億規模でいるということも考える必要があると思います。こうした人たちも豊かに暮らす権利があります。核エネルギーを使わずとも、それを可能にするもっと安全な方法があるならそれが一番でしょう。しかし爆発的なエネルギー需要に応えられる、そうした方法があるのか、私は知りません。エネルギーを必要とする新興国が、核エネルギーを平和利用して自分たちももっと豊かに暮らしたいと申し出たとき、先進国がそれを制止できるのか、すべきなのかもわかりません。
    仮に、貧しい人たちが豊かに暮らす方法が、核エネルギー利用にしかなかったとしたら、核エネルギー利用の制限や新技術開発の放棄は、そうした貧しい人たちを貧しいままに放置して、その犠牲の上に先進各国が豊かに暮らす、ということになりかねません。
    本当に難しい問題だと思います。

  3. RIEKO says:

    お返事ありがとうございます。原子炉の事故は、一時的に大きなショックを受けてしまいましたが、今は徐々に冷静になってきました。
    先進国で生まれてしまったわたしとしては、無駄遣いはよくないけど、やっぱり不便を感じない程度の電力は供給されていたいです。とても難しい問題だけど、原子力発電なしでというのは、難しそうです。
    わたしが住む団地の奥様たちは、放射性物質に多くの人が過敏に反応していますが、信頼がおけると思えるところからの情報を見聞きすると、こういうことに過敏になるのもナンセンスだと感じました。
    安全への取り組みも含めて、これまで以上に原子力発電の研究をすべきなのかな…。

  4. shinya says:

    今回 関東にすむ私の地域は 主要施設があるため停電地域になりませんでした しかし、自分でできる節電はなにがあるかと考えすべての我が家にある電球等をLEDライトにすべて交換して節電をしていく事にしました もちろん、太陽光に関しても関心があり設置が 予算や耐久 そして、故障に対しての不安等がもう少しなくなれば 設置しようと考えています。ブログに書いてあった「元をとれるのか?」という意見に近いと思われると思いますが、月2万円の電気代を利用している我が家が 年間だと24万・・10年だと240万 過剰電力をボランティアで提供しても 設置にかけた費用が300万かかったとしても、その間の保証があれば設置に前向きに考えてみたいです

    初期設置費用+メンテナンス費用=非設置時電気料金X月+過剰電力ボランティア提供

    で、あればということです
    生意気な発言ですみません
    やはり 簡単に設置という金額ではないので いろいろと考えています

  5. イズミル says:

    いつも参考にしながら読んでます。
    電気を使わないと物流(買い物、アマゾンに慣れすぎました)もこうやってメッセージを送ることも受け取ることもできにくい世の中で、30年前の水準に生活レベルを戻せるか?
    個人の考え方一つで、情報やモノは即時に欲しがらず新聞や店舗都合の入荷を待つなどの各部門に負荷をかけない対応は出来ても(三丁目の夕日的な世界)世界との競争に勝てず(ならず)結果的にさらに貧しくなるとは思います。

    日本国に今の1億3千万を養う力(雇用、エネルギー、財政など)がないとしたら、国をあげて計画移民しかないのか、その対象が東日本民であっていいのか(私は中国地方在住です)、地震がなくても考えなきゃいけなかった問題をより切迫した状況で考えなきゃならんと思ってます。

    あとはこの国の一極集中と富の不明瞭な偏り(政治家、一部公務員、大手マスコミ、東電社員と最高リスクで作業を強いられる協力会社の差に代表される)などを一度シャッフルしないと、真の復興はないのではないか、と。戦後から色んなウミがたまりすぎたのがより顕著になったのでは。