太陽生活MORE

たまたま書店で見かけて、ずいぶんと以前に買って机の上にずっと放置されていた書籍『エネルギー問題!』(松井賢一 著)を正月休みに読んでみました。太陽生活ドットコムやら、この太陽生活MOREやらで、エネルギー問題について発言したりする手前、勉強になりそうだと買い置きしてあった本です。書店でざっと目次を立ち読みしたときに、エネルギー問題にまつわるひととおりのトピックがカバーされているようだったので、別の本のついでに買ったのでした。

石油問題の本質:石油はなくなるのではなく、使われなくなる

この本冒頭は、こんなセンセーショナルな滑り出しで始まります。正直「ああ、よくあるアジテーション本の1つだったか」とがっかりしました。まあそれでもせっかく買ったんだし、どんなアジテーションなのかと読み進みました。

石油はいつか枯渇する。これはだれもが共通して持っている認識だと思います。石油のような天然資源に限りがあるのは当たり前ですし、一方でそうした資源へのニーズは急激に増えているのですから、いつしか人類は石油を使い果たしてしまうに違いない。そんな未来の世の中で、人々が文明的な生活を営むために必要になるものの1つが太陽光発電などの自然エネルギー活用だ。私のおおざっぱな「エネルギー問題」意識といえば、その程度のものでした。

ところが本書は、石油はなくなるどころか、そのうちあまり使われなくなるというのです。どうせ大した裏付けもなく、自己中心的な論旨が展開されるんだろうと思って読み進むと、意外にも、歴史的な背景やら、客観的な指標なども豊富に盛り込みながら、どうしてそうなのかがきちんと説明されていました。ここで詳しくは説明しませんが、その理由は「石油探査や採掘技術が高度化し、確認埋蔵量は増え続けていること」「石油の需要家が価格統制力を失ったOPECに見切りをつけ、石油離れを起こしつつあること」「石油需要の柱である自動車の電気化が進み、需要が激減すること」などだと説明されています。

エネルギー問題の現場で、この数十年何が起こってきたのか

著者の松井氏は、数十年にわたって、国際エネルギー機関(IEA)や国連(UN)のエネルギー問題のコンサルタントやアドバイザーとして活動されてきた人で、いわばエネルギー問題の舞台裏を見続けてきた人だといってよいでしょう。やはり、現実に起こったことに精通した人の論は迫力があります。

石油問題に続き驚かされたのは、地球温暖化問題の説明です。松井氏は現在の地球温暖化問題に懐疑的な目を向けながら、温暖化問題をめぐり、国連などでどのような駆け引きがあったのか、その中で日本がどれだけ貧乏くじをひかされているかがわかりやすく説明されています。京都議定書が定めた「1990年比での削減目標」が、なぜ「1990年」なのか。恥ずかしながらそれまではあまり深く考えなかったのですが、ヨーロッパ諸国にとってそれが有利だったからだそうです。説明によれば、1990年以降、イギリスは発電用燃料を石炭からガスに切り替え、ドイツは非効率だった旧東ドイツの発電所の効率を大幅に高めたため、この2国分だけで、ヨーロッパ全体の削減目標を達成できてしまうからだというのです。それではまるで、後出しジャンケンではありませんか。

また国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)において、ヨーロッパ諸国は一国一人で会議に参加するため参加者が大勢いるのに、削減目標の設定はEUで1つなので、議論や制度を有利な方向に導きやすいという問題もあるそうです。

表向きの報道だけ見ていると、ヨーロッパ諸国は二酸化炭素削減に非常に積極的なように思えますが、裏側ではこういう駆け引きがあり、結局割を食うのは日本だけ、というような状況があるようです。国連で大風呂敷を広げた鳩山前首相がこのあたりの事情を知っていたのかどうか、大いに気になるところですね。

素人でも読める、国際エネルギー事情の解説書

ついつい力が入ってしまいました。でも本当に、エネルギー問題について、私のような素人でもわかるように、やさしく解説してくれている良書です。この手の解説書というと、研究者が研究者に向けて書いた論文か、わかりやすいが信憑性や裏付けは非常に怪しい解説本かに分かれてしまう中で、本書は歴史的な経緯や客観的な指標を豊富に使いながら、それでいて研究論文ではなく、読み物として楽しめる稀少な本にまとまっています。

エネルギー問題に関心のある方は、ぜひとも一読されることをお勧めします。きっと、いままで持っている「エネルギー問題の常識」を気持ちよくひっくり返してくれるに違いありません。

『エネルギー問題!』(松井賢一 著/NTT出版 発行) ISBN978-4-7571-6046-0 価格:2415円


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