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太陽光発電システムを設置する際にもらえる国からの補助金ですが、平成22年度の補助金では、設置費用が1 kWあたり65万円を超えないことが条件になっています。これは機器の購入代金だけでなく、設置工事の費用を合わせた金額が、設置する太陽光発電の出力キロワットあたり65万円以下でないと補助金がもらえないということです。たとえば3 kWのパネルを搭載するなら、トータルの費用が65万円×3kW=195万円以下でなければいけません(一部例外が認められている追加工事などがあります)。

太陽光発電システムの設置で補助金がもらえることは広く知られています。また補助金額は1 kWあたり7万円と比較的高額で、一般的な住宅では3~4kW程度のパネルが乗りますから、20~30万円程度を補助金としてもらえることになります。この補助金を当てにしないでシステムを購入しようという人はいないでしょう。

つまり工事業者からみれば、1kWあたりの工事費用を何とかして65万円以下に抑えなければ買ってもらえない、ということです。昨年度(平成21年度)は1kWあたり70万円が基準だったのですが、ソーラー・パネルなどが値下がりしているという理由から、今年(平成22年度)はこれが65万円と5万円削減されました。

制限は何のためか?

基本的にこの制限は、できるだけ太陽光発電システムの価格を低減させて、普及を促すことを狙ったものです。また不当な高値での設置工事を防止しようという、消費者保護の観点もあるようです。

太陽光発電システムの設置工事料金の中身はどうなっているのでしょうか。原価構造を大雑把に図にすると、次のようになっています。

太陽光発電システム設置費用の原価構造

太陽光発電システム設置費用の原価構造

まずはソーラー・パネルやパワーコンディショナ、発電モニタなどの機器原価がかかります。次に設置工事の原価です。こちらは主に工事を担当する人の人件費でしょう。そして設置工事業者は営利を追求する会社組織ですから、原価に加えて適正な利益を見積もりに乗せる必要があります。業者としては、これらを何とかして1kWあたり65万円以下に抑えながら、他社との価格競争に勝ち、それでいてできるだけ利益を大きくする必要があるわけです。単価の高いパネルを仕入れている業者にとっては、「1kWあたり65万円以下」という制約自体も厳しいのですが、加えて他社との価格競争にもさらされており、業者からは「ほとんど儲からない」という恨み節も聞こえてきています。

あなたが工事業者の社長だったら

ここで工事業者の社長になったつもりで考えてみましょう。他社との価格競争に勝って仕事を獲得しながら、何とかして利益を最大化するのがあなたの目標です。さてどうしますか?

まずは、ソーラー・パネルなどの機器類をできるだけ安く仕入れることでしょう。一般的なビジネス常識から考えれば、大量に仕入れるなど、メーカーへの価格交渉力をつけて単価を下げてもらうか、より安いメーカーの製品があるなら、それに切り替えることになるでしょう。

次に工事原価。これは人件費の割合が高いのですから、できるだけ単価の安い職人さんを使い、できるだけ少ない人数で工事することです。また、なるべく手間を削減し、使わなくてすむ部品や、高価な部品はできるだけ使わないようにします。

とはいえ機器の仕入れ価格は急に値切れるわけではありません。安価なメーカー製品に乗りかえるというのも、そう簡単にはいかないはずです。かといって赤字で工事するわけにもいかないので、当面は工事原価のほうを圧縮するほかないでしょう。具体的には、安全性や耐久性をギリギリまで下げて部品や工程を節約する必要があるかもしれません。単価は安いが未熟な職人さんを増やす必要があるかもしれません。いいパネルや部品、丁寧な工事は顧客のためと思いつつ、一方では原価上昇を抑えなければ仕事がとれない。誠意のある真面目な業者ほど、このジレンマに悩まされているようです。

安いに越したことはない。けれどその前に

太陽光発電システムは高額な買い物ですから、できるだけ安く買いたいと思うのは人情というものです。しかし太陽光発電システムの設置は大切な屋根に重量物を乗せる工事ですし、20年以上と長く使うものですから、安く買い叩くあまり、安全性や耐久性を犠牲にするのでは意味がありません。万一、手抜き工事などされて、後から追加工事などが発生するのでは、かえって高くついてしまうはずです。

別に業者の肩を持つつもりはありません。ものを売る立場として、値下げ努力をするのは当然のことです。しかし、Yahoo!知恵袋などの質問掲示板で、太陽光発電システムの設置に関する質問や回答を見ていると、ほとんどの消費者が注目しているのは「価格」のみで、「品質」や「耐久性」などは置き去りになっているように感じます。

素人の消費者でも判断材料にできるような、長期の品質や安全性に関する明確な基準がないというのが大きな問題の1つではあります。しかし、必要以上に激しい値引き圧力をかけると、すぐには目に見えないところの品質や耐久性を犠牲にする危険があること、良心的な業者が離れていってしまう恐れがあることは念頭に置きたいところです。くれぐれも、安物買いの銭失いにならぬようご注意を。

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